“まちづくり”について

当NPO設立の動機となった
サステイナブル・コミュニティとは


“まちづくり”と住宅について

 コミュニティには規則があるのが先進国の常識です。欧米がそうなっているからではありません。一定の集団が安心安全で豊かな生活をするには当然のことだからです。日本は先進国の常識から外れてしまっています。その結果、日本と欧米では住宅の資産価値に天と地の差が出てしまいました。
 下記のグラフを(拡大して)ご覧ください。データが古いですがこの傾向は今も続いていると思います。


 上のグラフは、日本とアメリカの住宅投資額累計と住宅資産額(評価額)の経年グラフです。青の縦線は住宅資産額であり、赤の折れ線は住宅投資額累計です。アメリカを見るとほぼ住宅投資額累計と住宅資産額が比例しています。つまり、住宅を売ろうとする時に、ほぼ投資額に見合う金額で売れることを意味します。青線が赤線を越しているところは利益です。

 ところが、日本の方はご覧の通り、投資額累計はガンガン上がりますが、資産額は低迷しています。つまり、家を売ると大きな損失が残ってしまう。もし、ローンの残りがあると、家を手放しても借金だけが残ることになります。住宅を処分して老人施設に入ろうと計画しても叶わないことになります。人生で一番高い買い物で大損するのです。休みも返上して働いて生活費も節約して手に入れた住宅が不幸の原因になってしまう。この事実が、日本人が豊になれない大きな原因のひとつです。

 2011年現在で、日本全体で約500兆円の評価損が出ているので、国民一人当たり約400万円の損を抱えていることになります。なぜこんな惨めなことになってしまうのでしょう。

 2001年にこのNPOを立ち上げました。創立総会の記念講演に信濃毎日新聞論説委員のフランス人女性をお招きしました。彼女が開口一番言った言葉はショックでした。
 「日本の街はキレイじゃありません。どうして日本の街には「まちづくり条例」がないのですか?欧米では「まちづくり条例」があるのが常識です。」

 これが原因と言って良いと思います。極論ですが、スラム街に1億円かけて邸宅を作ったとします。数年後、事情があって売りに出したとします。どんな値がつくか想像して下さい。値は多分つかないと思います。スラムだからです。まちがダメだからです。これは極端な例ですが、日本の街は、どこに行っても平凡でありふれて、美意識の感じられない街ばかりです。なので、自分の家だけがどんなに良くも評価が良くならないのです。周囲や地域のことを考えない自分本位の家作りだからです。

 日本と欧米では住宅についての価値観がまるで違います。日本では土地も家も100%自分のもので、他人がそこに口を挟んだら事件になってしまいます。ですが、欧米では外観はパブリック(公共)なので、“まちづくり条例”に縛られるのが当然と考えています。住宅はコミュニティの資産であり、100%自分のものではないと思っています。それが常識なので美しい街並みができるのです。

 下の写真は、立科町の姉妹都市カリフォルニア州オレゴン市の普通の住宅地です。実はこのNPOを立ち上げたのは、オレゴン市の住宅地の美しさを見てショックを受けたからです。美しさに圧倒されました。


 日本人が豊かになるための出発点は自分の住んでいる“まち“の「まちづくり条例」を作ることです。その場所ならではの素敵な“まち“にすることから始めましょう。

サステイナブル・コミュニティとは


 書籍「サステイナブル・コミュニティ」からこれを知りました。(川村健一、小門裕幸共著学芸出版社:写真参照)

 '86年にアメリカの建築家ピーター・カルソープが始めて使った言葉で、「半永久的に持続可能なコミュニティー」という言味です。環境破壊が問題になっている現代における理想郷とも言えます。

 “まちづくり”という言葉の持つ内容はとても大きく多岐にわたります。“まちづくり”とは、人間が楽しく快適に生活し、働き、学び、遊ぶことのできる住民が誇りのもてる“まち“=コミュニティをつくることです。

(参考:「まちづくり読本」延藤安弘著:晶文社)

「サステイナビリティ」とは、

千年後でもこの地球の上で生きていけるような町づくりをし、
千年後でもこの地球で生きていけるような方法で生活するということを意味します。


サステイナブル・コミュニティを、少し具体的に表現すると、次のようになります。

 自然環境をできるだけ損なわず、エネルギーを浪費せず、資源をリサイクルする仕組みを組み込み、人に優しく人とのふれあいのある人間性豊かな生活の場を提供する。現代技術を生かすだけでなく、伝統に根ざしたローカル技術も利用する。生活に必要なものが身近で揃えられ、車を使わないでも用がたせるようなコンパクトにデザインされた町。何よりもそこの住人が、その町に住んでいることを誇りに思える町。

サステイナブル・コミュニティの内容

スマート・テロワール協会理事を務める川村健一氏が、小門裕幸氏との共著の中で、「アワニー原則」(下段に説明)を踏まえて、次のようにサステイナブル・コミュニティをまとめています。

【サステイナブル・コミュニティは、二つの理念と七つの要素から成り立つ】
≪二つの理念≫

1.強いコミュニティの創造
2.コミュニティの「サステイナビリティ」の追求

≪七つの要素≫

1.アイデンティティ
2.自然との共生
3.自動車の利用削減のための
  交通計画
4.ミックストユース
5.オープンスペース
6.画一的でなく、いろいろな意味で工夫された
  個性的なハウジング
7.省エネ・省資源

(この内容は本をお読みください)
(参考:「サステイナブル・コミュニティ」(川村健一・小門裕幸著 学芸出版社)より)

「アワニー原則」とサステイナブル・コミュニティ

 1991年の秋、カルフォルニア州にあるヨセミテ国立公園のホテル・アワニーに地方自治体の幹部が集まり、その会議で発表されたのが「アワニー原則」である。
 彼らは‘80年前後から、自分たちの考えに基づいて新しい町を建設し、高い評価を受けるとともに、開発事業としても成功を収めていた。彼らの成功を見て、模倣した町が各地に造られるようになったが、彼らの目的や意図とは異なる不完全なコミュニティーが次々と出現した。
 この状況を見た彼らは、自分たちの意図する町づくりの全体像を明確にする必要性を痛感し、6人連名で町づくりにおいて遵守すべき諸原則をとりまとめた。これがアワニー原則である。この原則の発表の際、サステイナブル・コミュニティという言葉が使われた。

 4章から成っています。
1.序言 (Preamble)
2.コミュニティーの原則 (Community Principle)
3.コミュニティーを包含するリージョンの原則 (RegionalPrinciples)
4.実現のための戦略 (Implementation Strategy)

詳しくは下記URLをお読みください。

サステイナブル・コミュニティとアワニー原則
https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2012/01/blog-post_29.html

サステイナブル・コミュニティのモデル「ヴィレッジ・ホームズ」

 カリフォルニア大学デービス校(醸造学で有名)がある町に創られたフランスのミッテラン大統領も視察に訪れたという世界的なモデルです。当NPOでも視察に行きました。

 開発者マイケル・コルベット氏は、サステイナブル・コミュニティの原則となっている「アワニー原則」の策定に参加しており、その原則の原型がここにある。

 詳しくは下記URLをお開きください。下図は平面図です。拡大してご覧ください。写真を見ると、ごく普通の住宅地に見えますが、二つの理念と七つの要素がしっかり組み込まれています。道路をよく見て下さい。住宅地で求められるのは静けさと安全性だということがよく判ります。利便性ではないのです。ワインもこのコミュニティで造られます。

 日本の住宅地で最高値がつくのは、幹線道路に面した角地ですが、欧米ではその場所は一番安い場所です。一番高値のつくのは、奥まった閑静なところです。

ヴィレッジ・ホームズ(サステイナブル・コミュニティのモデル)
https://shinshumachidukuri.blogspot.com/2012/03/blog-post_13.html

ヴィレッジ・ホームズの概要 Village Homes

 マイケル・コルベット(Michael Corbett:建築家)によって1975年に始まり1982年に完成。彼は後に市長をつとめる。
 カルフォルニア州都サクラメントの南西約26kmにある、人口約6万人、カルフォルニア大学デービスデービス校があるデービス市の一角にある。
 1997年11月、まだ当NPOはできていませんでしたが、仲間と視察。ランドプラン図と写真はその時のもの。

◆ 建設の目的

1.生態学的に持続的に存在可能なコミュニティをつくる
2.強いコミュニティをつくる(親密度、安全性)

◆ 開発の経緯

1.エコロジーと自然に良い適地を探した。あの土地が売りに出ていた。
2.1万5千ドルしか金がなかったが、開発計画をつくり、投資家を募り、政治的にも働きかけ15万ドル集めた。
3.許可を取るのに3年かかった。
4.7年の返済予定だったが、5年で返せた。

◆ 敷地面積

60エーカー = 約24ha

◆ 住宅戸数

240戸 人口 約700人

◆ 施  設

町の40%を占める下記の「コモンエリア」は、ホームオーナーズ・アソシエーションが所有
・野球場がスッポリ入りそうな大きなグランド
・ブドウ園数カ所
・幼稚園(集会所兼用)
・プール
・レストラン(コルベット氏経営)
・貸し事務所(3~4)
・共同菜園(約1ha)
・アパート(数個)

◆ 世論調査

近所の人をどの位知っているか?(全米平均は7名)
・ヴィレッジ・ホームズは40~50名。

◆ ヴィレッジ・ホームズの特徴

・車道入口は4ヶ所しかなく、全部行き止まりです。安全で静かです。
・車道からは、塀と樹木で遮断され、家は屋根しか見えない
・家は、中央を緩やかにカーブしてはしるパス(歩行者と自転車だけの小径)と共同管理されるコモンエリアを挟んで両側に並ぶ
・パスと、果樹と花と芝生で広々としたコモンエリアを挟んで並ぶ8戸の家が最小のコミュニティを形成する
・住人のコミュニケーションを良くするために、郵便物は集合メールボックス方式
・ホームオーナーズ・アソシエーションがあり、月額78ドル(‘97年当時)の会費。
・3人のガードナーを雇い、コモンエリアの管理をさせる。ここの住人の1年間の果物とワインは無料
・95%の家には、太陽温熱システムが取り付けられている
・コンクリート構造物はほとんど見えない
・水を現地の地下に浸透させるため、水路は全て土水路
・昔の川の位置に浸透式の池をつくってる
・水路の橋は、木で造られてる
・小学校は、ヴィレッジの外だが、約400メートル
・中学校も歩いていける距離

日本とアメリカの住宅地に対する価値観の違い。
◆「利便性」をとるか「安全と静けさ」をとるか
<場所の選定>

・日本では広い道路からの角地が一番価格が高い
・アメリカでは、角地は一番安く、一番奥の静かなところがベスト

<道路の作り方>

・日本は広くて直線が良い。
・アメリカは、広すぎず曲線が良い。(車がスピードを出しすぎないように)

1997年、「Village Homes」を視察

 2001年に、認定NPO法人信州まちづくり研究会を立ち上げたのは、「サステイナブル・コミュニティ」(半永久的に持続可能な“まち”)を創ることが目的でした。視察したのはその4年前でした。

 1997年11月、川村健一氏(当時、広島経済大学教授)にコーディネーターをお願いし、サステイナブル・コミュニティの世界的なモデル「ヴィレッジ・ホームズ」を長野県輸入住宅協会のメンバーと一緒に視察し大きなショックを受けました。その後、デンマークのエコヴィレッジも視察し、その理念と手法を“まちづくり”の現場で生かす努力をしました。一般の住宅地よりはかなりマシな“まちづくり”はできましたが、サステイナブル・コミュニティには手が届きませんでした。私たちが知る範囲では、日本にはまだ実在しないようです。



アメリカに12箇所あるリタイアメントコミュニティ『サンシティ』。アクティブアダルトコミュニティとも言う。一つのコミュニティの人口は1万~2万人。写真はラスベガス郊外にある『サンシティ・ラスベガス』。開発者は、ニューヨーク・ヤンキースの元オーナーデル・ウェブ。


高齢者を中心にした町づくりの可能性(日経BP)
https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20140121/328909/

ラスベガス郊外のサンシティ見学(メープルメープルのブログ)
https://okinawa627.ti-da.net/e5957949.html

【 この活動は、スマート・テロワール協会(東京)から支援と指導を受けております 】

Copyright © 認定NPO法人 信州まちづくり研究会
All Rights Reserved.