東信スマート・テロワール構想

上田、佐久~両広域15市町村(4市6町5村/人口約40万人)が対象

「スマート・テロワールとは?」で示した地域社会のあり方を、私たちの東信地域にあてはめ、実現しようという構想です。

 「地域をまわって考えたこと」(小熊英二著 東京書籍2019)の中に次のようにあります。

 『地域社会とは、「ヒト・モノ・カネ」という川の流れのなかにできた、渦巻や水溜りのようなものだ。「なぜここに渦巻が無くなったのか」「どうしたらここに渦巻が作れるのか」といった問題は、全体の流れの変化を踏まえずに考えることはできない。地域社会とは、そこにいる人々の活動や社会関係の総体のことであって、そこに山や川があることではない。

市区町村は行政や政治の単位であって、地域社会の単位ではない。

川の流れが変わってしまった以上、復興はありえない。創造しかない。』

 小熊英二教授が指摘していますように、「地域社会と市区町村が一致している地域の方が好循環を作りやすい。」のは当然です。民・産・学・官が協働して実現したいものです。

「東信スマート・テロワール」とは、
私たちが暮らしている地域社会のことです。

◉ なぜ、東信スマート・テロワールなの?

東信自給圏のエリア

 スマート・テロワールの規模として、提案者の松尾雅彦さんは「近隣の地方都市を含めた人 口10万〜70万人の自給圏」という想定をしています。これは、人・物・金・環境が循環する適度な規模ということでしょう。小さ過ぎれば循環が成り立ちませんし、大き過ぎれば物も人心も交流が疎になります。40万人というのはちょうど平均値であり、日本のモデルになるには最適ではないでしょうか。松尾さんは、このような「スマート・テロワール」が日本中に100箇所くらい創れるのではないかと本の中に記しています。

 近隣の地方都市としては、上田市、佐久市、小諸市、東御市があります。消費の中心地となります。この4市を取り巻く6町5村を合わせて15市町村となり、面積は2,477平方キロメートル(ほぼルクセンブルクと同じ。これより小さい国が27もあります)、人口約40万人の適度な規模と考えられます。地形的にも文化的にも歴史的にも繋がりが濃い地域です。

地図にすると、左のようになります。

◉ 東信スマート・テロワール地域の今はどうなってるの?

 東信地域の人口、面積、農地・農業、畜産、工業、商業、観光などのデータをできる限り調査して下記表にまとめました。これを読みながら、みんなで東信地域の未来を語りましょう。
(この数値は全て公式に国や県から公表されているデータを使っていますが、厳密に精査したものではありませんのでご承知ください)

 特徴をあげれば、上田広域は工業と商業が強く、佐久広域は農業と観光に強いという特徴があり、スマート・テロワールの視点から見れば、強い生産地と強い消費地を地域内に持っている循環構造を作りやすい理想的な地域と言えるのではないでしょうか。

重要要素を整理してみました。(上田、佐久は広域行政圏を表します)

東信地域の人口、面積、耕地、山林、農業出荷額、製造品出荷額、商品販売額の市町村別、広域別データ(認定NPO法人 信州まちづくり研究会 作成)

◉ 東信地域唯一の屠場問題を考える

 2020年7月頃、東信地域唯一の屠場である「佐久広域食肉流通センター」が廃止されるかもしれないと問題が、突然、同センターを管轄する佐久広域議会に提案されました。
 畜産業者達は、事前に何の相談も受けておらず、慌てふためいています。蓼科牛というブランドが消えてしまうかもしれないと問題も含んでいるようです。これは大問題です。経営数字だけで判断する問題ではない筈ですが、広域議会では経営数字の面からだけ検討されているようです。 そもそも論ですが、テロワールから屠場をなくしたら、食の循環などという言葉は使えませんし、テロワールが成り立ちません。もし、「どこでだろうと屠殺できれば良いじゃないか」と、効率だけで考えられているとしたら、とんでもないことです。循環と自主自立の基本に反します。

 しかし、テロワールという新しい考え方に理解が及ばない人々に対してこれを説明するのは至難の技です。しかし、やらなければなりません。当NPOの使命かもしれません。
 やり方次第で成り立つ筈と考えています。欧米では、屠殺から加工、レストラン経営まで家族経営でやっています。なので、それぞれのテロワールで特徴のある加工品が作られています。
 カルビー株式会社の経営者であった松尾雅彦さんから何回も聞かされた言葉があります。「決して大きな工場は要らないよ。小さくて良いんだ、各地域に小さな加工場を作って、そこで地域の女性が働くんだ。」と。私自身計算はできませんが、松尾さんの言葉を信じても良いと思うのです。ですから、屠場経営も経営改革してこの地域に相応しいやり方でやればできる筈と考えています。日本人が好きなドイツをはじめとするE U諸国で成り立っていることが日本でできない筈はないのではないでしょうか。

◉ どうやって実現するの?

 下に掲示した「ホップ・ステップ・ジャンプで『30年ビジョン』(未来像)を達成」は松尾雅彦さんの提案です。
 そこにありますように、やらなければならない難しい仕事がたくさんあります。この事は、それぞれの部落或いは区の土地活用が出発点ですので、当然、そこの全住民と行政の協働になります。お金もかかりますし様々な行政的手続きも必要ですので、国・県、金融機関との協働も必要です。国家百年の計というべき事業ですから全住民と行政挙げての協働事業になります。

 地域が生まれ変わらなければならないので、思い切った改革が必要です。一番の大仕事は水田の畑地転換です。どこを水田で残し、どこを畑にするか、どこを草地にするか、どこを里山にするか、その計画をゾーニングと言います。
 大事なことは、現在それぞれの住民(農家と非農家両方)の皆さんの権益ができるだけ犠牲にならないように進める必要があります。

 実例をお話しします。60才を過ぎる方々なら記憶にあると思いますが、昭和30年代から半世紀にわたり農業構造改善事業(基盤整備事業とも言いました)と称して、日本中の小さな水田と畑地を大きく四角に作り替えました。それが昭和の構造改善事業であり、今の農村風景です。
 この事業の実施に当たって、各地で住民代表によって組織されたのが、「○○地区圃場整備実行委員会」でした。対象地域の全農地を一旦一つにまとめ、そこに農道と水路と新たな圃場を設計し、建設業者に発注したのです。それぞれの農家にしてみれば、形も場所も変わってしまうのですから、大騒動でした。ですが、そのおかげで現在の機械が動きやすい大きな四角な圃場になっているのです。

 令和の構造改善事業は畑地への転換です。ですが、令和の事業は、昭和の事業に比べたら、はるかに楽です。一番お金のかかる農道と水路と測量はできているからです。土手を崩し表土をならすだけですから費用も時間も昭和の事業よりはかなり楽なはずです。

松尾さんが提案した「スマート・テロワール」の
具体的な推進工程は下記です。
2020年現在、第一着手点の始まりにいます。

◉ 目指す食料自給率目標

 まだ実態がしっかり掴めていませんので、今後、第一着手点の内容にあるように調査が必要です。下記は、松尾さんが提案した目標です。国全体の自給率は70%になります。
 これが達成できれば、先進国並みになれますし、国民の食の安全が保障されます。

◉ 推進体制の素案

 全体計画を決定するのは、「東信スマート・テロワール推進協議会」(仮称)です。ここで述べるのはあくまでも素案、叩き台です。
 この事業の当事者は各地域の住民の皆さんです。この推進を強制する行政も組織もありません。従って、合意形成ができた地域からスタートすることになるでしょう。東信地域全体で同時にスタートすることは考えられません。
 素案を図にしてみました。

花・写真

【 この活動は、スマート・テロワール協会(東京)から支援と指導を受けております 】

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